南ア北部 双児山(2649m)、駒津峰(2752m)、甲斐駒ヶ岳(2967m)、三ツ頭(2580m)、烏帽子岳(2594m)、熊穴沢ノ頭(2610m)、 2016年7月30〜31日  カウント:画像読み出し不能

所要時間
7/30 5:45 駐車場−−5:50 戸台大橋−(バス)−7:08 北沢峠−−8:39 双児山−−9:14 駒津峰−−10:16 甲斐駒(休憩) 11:27−−11:45 雷鳥に遭遇−−11:58 鎖場−−12:22 六合目岩室 12:52−−12:59 水場 13:24−−13:34 六合目岩室(幕営)

7/31 4:24 六合目岩室−−4:48 三ツ頭−−5:00 烏帽子岳 5:03−−5:35 熊穴沢ノ頭−−5:51 中ノ川乗越 5:53−−7:01 戸台川−−7:35 堰堤−−7:42 休憩 8:06−−8:11 堰堤−−8:16 発電用取水堰−−8:51 戸台口−−9:03 駐車場

場所長野県伊那市/山梨県北杜市
年月日2016年月7月30〜31日 幕営1泊2日
天候1日目:晴後霧  2日目:快晴
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場戸台大橋北側の河原に下る車道脇に駐車場あり
登山道の有無あり
籔の有無基本的に無しだが甲斐駒〜中ノ川乗越間は登山道に藪がはみ出す個所あり
危険個所の有無鎖場が1か所あり。中ノ川乗越から熊の穴沢への下りはしばらくガレを歩くが足元不安定&岩が尖っているので転倒すると怪我をしやすい
山頂の展望熊穴沢ノ頭以外は大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
1日目(北沢峠〜甲斐駒〜六合目石室〜水場)
2日目(六合目石室〜三ツ頭〜中ノ川乗越〜戸台川〜戸台口)
コメント戸台口を起点に周回。六合目石室で幕営してのんびり山行。1日目はガスって展望が得られなかったが2日目は早朝から快晴で大展望を楽しめた。


地図クリックで等倍表示
1日目断面図(北沢峠〜甲斐駒〜六合目石室〜水場)
2日目断面図(六合目石室〜三ツ頭〜中ノ川乗越〜戸台川〜戸台口)


戸台大橋のすぐ上流にある駐車場 戸台大橋ゲート
時刻表。記載は無いがハイシーズンは5時から運行開始 北沢峠
甲斐駒に向かう 森林限界
双児山 駒津峰はガスの中
駒津峰 渋滞中
直登道/巻道分岐は直進 ガスって涼しい
山頂直下 甲斐駒山頂
ガスが切れて仙丈ヶ岳登場 坊主山へと続く尾根
甲斐駒山頂はこの賑わい 鋸岳方面へ進む
雷鳥登場 子供は一羽のみ
このピークが坊主山へ続く尾根の起点 これが坊主山へ続くハイマツの海
この下は昔は針金がかかっていた場所。今は鎖あり 針金はなく鎖
鎖場を見上げる 若者3人組の鎖場通過
六合目石室が見えてきた この砂地が六合目岩室テント場
六合目石室避難小屋 六合目石室付近で樹林帯に突入
六合目岩室テント場 今回は避難小屋泊まりではなく西端にテント設営
水場に向かう 最初は石楠花
シラビソの急斜面を下る 水場。流れは細い
漏斗とホースで水を集める 効率的に設置すれば短時間で集水可能
テント場に戻る 翌朝の出発
夜が明けてきた 三ツ頭への登り
間もなく日の出 三ツ頭山頂
三ツ頭から見た甲斐駒、北岳
三ツ頭から見た中央アルプス
八丁尾根分岐 烏帽子岳へ向かう
昔は道は無かったのだが 烏帽子岳山頂
烏帽子岳から見た360度パノラマ写真(クリックで拡大)
烏帽子岳から見た奥日光
烏帽子岳から見た槍穂
烏帽子岳から見た坊主山 烏帽子岳から見た八丁尾根
烏帽子岳を下り縦走路に戻る 縦走路に合流
巻道らしき分岐は偽物。尾根上の細い道が正解 ハイマツ混じり
嫦娥岳へ続く尾根の起点はテント適地 嫦娥岳へ続く尾根
振り返る
中ノ川乗越へ下っていく タカネビランジが多い
落石に覆い尽くされた熊の穴沢 中ノ川乗越
鋸岳第二高点への登り テント場その1
テント場その2 テント場その3
熊の穴沢は谷の真ん中付近を適当に下る 稀にケルンがあるが道は無い
樹林帯に突入する寸前で踏跡登場 正面には仙丈ヶ岳
この日の始発バスも仙流荘を5時くらいに出発 踏跡の目印
唐松植林帯を下る 左の嫦娥岳の尾根は絶壁の連続
ガレの押し出しを横断 シラビソが深くなれば戸台川は近い
戸台川が見えるのは直前 釣り人がいた
熊の穴沢入口。目立たない存在で標識も無い 嫦娥岳を見上げる
昔は林道があった左岸側を歩く 角兵衛沢出合い
テントが2つ。鋸岳往復だろう 広い河原が続く
赤い堰堤は左岸側から高巻き 2つ目の堰堤は右岸に高巻き道あり
2つ目の堰堤の高巻き道 2つ目の堰堤を下ると林道に乗る
林道末端 発電用取水堰
取水堰下流側は林道が補修されていた でも林道は流出個所が何箇所もあり車両通行不能
渡渉は2か所あった。飛び石で渡る 次の林道を越えると生きている林道区間
堰堤を越えた林道。現役 車が入っていた
上流側を振り返る 戸台口。林道入口に車止めは無し
最近の長野県の有名いどころの登山口に多い 甲斐駒ヶ岳ではなく「東駒ヶ岳」が伊那らしさを示す
えらい数の注意喚起標識 駐車場所へショートカットする車道。今は車止め無し
橋も立派なまま 反対側の入口はゲートが閉まったまま
駐車場所到着


 今週末は北ほど天気が悪く後立山や北アは雨の予報。少し遠くなるが南ア北部まで久しぶりに足を伸ばすことにした。悩んだ結果、行き先は甲斐駒。北沢峠からテントを背負って上がり、鋸岳方面へ縦走して六合目石室で幕営。ここは何度も避難小屋に宿泊したことがあるが幕営の経験はない。初日が軽い行程なので適度な負荷となろう。2日目は中ノ川乗越から戸台川に下り戸台口でゴールインだ。

 長野から伊那は大北より遠く長野道を使った。一般道に下ってからも勝手知ったる道なのでカーナビの出番はない。仙流荘の駐車場は土手の外側はほぼ満杯で河原に下った駐車場はまだ空きあり。大型テントの光が見えていた。戸台大橋を通過してすぐに右に下る道があり、ここが戸台大橋に一番近い駐車場だ。なぜかぽつんと公衆トイレまであった。

 事前にバスの時刻はネットで調べたが、なぜかハイシーズンの金曜早朝のみ始発が5時台だった。土曜の間違いでは?と思ったが、後で戸台大橋の管理人に聞いたら間違いではなかった。まあ、今回はゆるゆるコースなので出発時刻が遅くなっても問題なかろうと、始発は6時台を信用することにして腕時計のアラームをかけて寝た。

 翌朝、予想に反して朝5時過ぎからバスのエンジン音が聞こえてくる。まだ朝飯を食っていないので食いながら準備。6時前に戸台大橋に到着したが、管理のおばちゃんによると仙流荘はすごい人出で既にバスは全数出払っているという。伊那市営バスのサービスの良さは相変わらずで、人出によってダイヤより早く運行を開始していたのだった。代わりに6時台のバスは定刻にはやって来ないので計画より遅れるが、これも想定の範囲内。橋でのんびり待つことにした。待ち時間が長くなり、おばちゃんがお茶とせんべいを出してくれた。

 そのうちに若者3人組が戸台川下流側から登場。あれ? 変な方向からやってきた。帰りはバスを使わず戸台川に下る場合は、私のように橋より上流に止めるのが歩く距離を短縮できて常識なのだが。おそらく大学生と思われるが北海道出身で本土の山はこれからのようだ。いいなぁ、まだまだ楽しめて。1人はヘルメットをザックにくくりつけているので鋸岳を経由して戸台口に下るのだと分かった。私の場合、今回は2日目は負荷を軽くしてお昼くらいに自宅に戻りたいので鋸岳は割愛だ。

 やがてバスが北沢峠から戻ってきて仙流荘へ向かった。しかし最初の一周目のバスで積み残しが出たとのことで次のバスも満員で戸台大橋にやってくるのでそう簡単には乗れないのは承知しているし想定の範囲内。2周目のバスも最初の数台は戸台大橋は通過したが4台目くらいで停車、座席は満員だが入口付近の床に2人座れるとのことで、私と若者3人組のうちヘルメットに装着可能な小型ビデオカメラを持った1人が乗り込んだ。残り2人は次のバスで同様に乗れるだろう。予想以上に仙流荘での乗客数が多くて、このままでは2周目のバスでも積み残しが出そうな状況なので、今回は特別の計らいだった。こちらは床でも座れれば文句はない。

 残念ながら今日は雲が多く、林道からは乗鞍岳など見ることができなかったが、鋸岳の稜線は雲がかかっておらず鹿の窓の向こう側の空が針の穴のように明るく見えていた。毎度のことだが伊那市営バスは運転手がガイドも務め、あちこちでどこが見えると解説してくれる。

 北沢峠は既に人で溢れていた。広河原行きの待合所は以前はテントだったが、今は立派な建物ができていてびっくり。ここも人が溢れていた。靴紐を締めて甲斐駒方面に出発。

 登山道も人が多く登山者が列をなしていた。ほとんどが日帰りなので軽装だが私は幕営装備で大ザック。前を歩く集団のスピードがちょうどよく後を付いて歩く。軽装の若者に追い抜かれるが気にする必要はない。北沢峠付近は上空は晴れていて樹林の隙間から青空が見えていた。でも甲斐駒山頂はどうかなぁ。既に標高は2000mを越えているし樹林帯は日差しが遮られて涼しく快適な登りだった。大集団が途中で休憩したところで追い越す。

 双児山近くで這松が登場、森林限界だがガスに巻かれてしまう。双児山では休憩はせず先に進む。鞍部でガスから抜け出るが登り返すと再びガスの中へ。這松の高さは徐々に低くなって本格的に森林限界を迎える。晴れていればいい展望だが今は真白な世界。

 たくさんの人が休憩している駒津峰も素通りして甲斐駒山頂を目指す。この先は岩場が連続するが、ここへ来て登山道が渋滞し始めた。毎週登山の私にとってはこの程度の岩場は岩場とは言えず歩行スピードは落ちないが、にわか登山者にとっては非常に歩くにくいらしい。特にちょっと段差が大きな下りで顕著に詰まっていた。

 鞍部の六万石から登りにかかり直登コースへ。こちらの方が登山者が少なく渋滞していないだろうとの判断だが、いきなり最初で5,6人のパーティーが。このグループも岩は不慣れなようで、でかいザックの私が先に行かせてもらう。直登ルートは基本的に岩の上や岩の隙間、縁を歩くので道が残りにくく慣れない人だとルートを見出すのが難しいかもしれない。かく言う私も正規ルートを外したりするが、安全に通過できるのは一つのルートだけではないので問題はない。

 傾斜がきつい巨岩地帯を抜けると白砂中心の斜面に変わる。ここへきて荷物の重さが足に堪えるが山頂はまもなくだ。砂の踏跡を辿って最後の急登で甲斐駒山頂到着。さすがに人が多い。残念ながらガスで周囲の山々は見えないが日差しが無いので涼しくて助かる。たまに部分的にガスが切れて仙丈ヶ岳や戸台川は見えたが、これから向かう鋸岳はずっと雲の中だった。自然と坊主山へ続く這松に覆われた尾根に目が行くが、ここも坊主山山頂付近は雲に沈んで見えなかった。

 どうせ今日は六合目までで時間はたっぷりあるので長時間のんびりしていると、戸台大橋で一緒にバス待ちした3人組が登場。山頂の別の場所で休憩していたのか、少し立ち話をしただけで鋸岳方面へと向かっていった。少し遅れて私も出発。

 最初の下りはルートが分かりにくく、変なルートに入り込んで花崗岩の裏側は2mくらいの段差が登場し、強引に下って正規ルートへ合流。さすがに北沢峠〜甲斐駒の登山道とは整備の程度は雲泥の差で、道は細く両側から這松がはみ出し半ズボンではちときつい。この尾根はもう何度も歩いているのでルートも覚えてしまう。大きな岩は南側を巻くのが正解だ。やがて先行していた若者パーティーに追いついてしまう。意外にのんびりやさんらしい。まあ、私と同じように今日はまったり行程だからな。それにこの道が薄いルートでは正しいルートを見極めるのに慎重なようだ。そりゃ初めて歩くコースだから当然か。それに彼らは水4リットルを持ち上げてきていると言っていたな。ただし3人で幕営装備を分担しているので1人あたりの荷物は私より明らかに少ないが。

 このまま私との距離が離れるかと思いきや、意外なものの登場で私が足止めされた。雷鳥の登場だ。甲斐駒は何度も登っているが、思い起こしてみると雷鳥は一度も見たことがない。鋸岳へ続く尾根では登山者数も少ないだろうから、ここの雷鳥は北アのそれとは違ってそれほど人に慣れていない様子。少し遠くから見守ってやり後続の3人組を待って雷鳥の存在を教えてあげる。この時期の雷鳥の子供は数羽いるのが当たり前だが、今回見た雛は1羽だけだった。

 この先は歩くスピードの差が出て私は先行で単独で歩く。坊主山へと続く尾根は相変わらずの這松の絨毯。もう2度と行くことはないだろうなぁ。ここまで下るとガスの層を抜けたが上空は雲に覆われたままだ。

 標高2740m付近の「鎖場」ならぬ「針金場」だった岩場は、なんと立派なステンレスの鎖が付けられていた。長年の針金から卒業か。これなら長年持つであろう。 私は素直に鎖で確保しながら下ったが、3人組のうちヘルメットを背負った青年は鎖を使わずフリーで下っていた。ただし後続は私と同じ対応だったように見えた。

 鎖場を通過すれば六合目石室は近い。岩と矮小なシラビソが点在する斜面を下っていくとシラビソの高さが徐々に高くなっていき、森林限界ギリギリを迎える。そして六合目石室付近は背の低いシラビソ樹林に覆われるようになった。避難小屋はその中にあるので屋根だけが見えている。今回は幕営なので小屋には立ち寄らず尾根上を下って砂礫地へ。

 幕営の目でここを見たことはなかったので快適に幕営できる平坦地があったか分からなかったが、3ヶ所ほど平らな砂地があった。今回は一番下側の樹林帯に接した場所を確保する。天気は相変わらずの雲に覆われているが雨が降りそうな暗さはない。テント内で過ごすにはちょうどいい天気かな。水汲みに行く前にテント設営をしておく。今日は他にテント泊の人はいるだろうか。

 水汲み前に鋸岳方面からGパン姿の軽装の単独の青年がやってきた。その姿は山屋らしからぬが、こちらから姿を表したということは基本的には戸台川から上がってきたと考えるべきだろう。この時間にここまでやってくるのはかなりのハイペースで素人とは思えない。青年はしばし休憩してから水場へと下って行った。その後、私が追い越した3人組が到着。彼らは水場に立ち寄ることはなく中ノ川乗越へと向かって行った。

 私も水場へ。水場へは急斜面を下っていく。ネット検索で先週この水場を利用した日との記録を発見したが、枯れているとか特にコメントは無かったので普通に汲めたようなので安心して向かえる。毎度のことだが尾根から水場への入口には目印や標識が無く不親切だ。ここへ初めて来る人が水場へのルートを発見するのは難しいだろう。避難小屋方向へ砂礫帯を斜めに下る踏跡が正解だ。

 急斜面をぐんぐん下るのはいいが登りが思いやられる傾斜だ。やがて岩棚ではないがちょっとした平坦地が登場すれば水場到着。思ったよりも水が細いがちゃんと出ていた。先ほどの軽装青年が水汲みを終えたところだった。ここで話を聞いて彼のルートが判明した。八丁尾根を登ってきて黒戸尾根を下る日帰り周回だそうだ。なるほど、駒ヶ岳神社を起点としたのであった。水を飲み尽くしたそうでここで補給できて助かったと言っていた。私の体力ではこのコースの日帰りはかなりハードで、やりたくはないなぁ。暗くなる前に下れるかは怪しいが、危険地帯は明るいうちに抜けられるだろう。

 彼がいなくなった水場で水汲み。水量が細くペットボトルのような口の容器に水を汲むのは難しく、備え付けのホースと漏斗を使用するのが賢明だ。うまくセットすれば2.5リットルの水を汲むのに1分程度で済む。ちなみに私がここを使って水場が枯れていた経験はない。

 ついでに全身の汗を濡れタオルで拭き取り、再び汗をかかないようゆっくりとテント場に登り返す。テントに戻ってからはやることがなく、平日の睡眠不足もあって昼寝。こういうときは日差しがないのは大助かり。ピーカンだったら暑くてテント内で寝ていられないだろう。夕方頃に一時的に雨がパラついたり雷鳴が聞こえたりしたが、この付近は雷雲に突っ込むことはなかった。

 この日はテント場は私だけ。テント場からは避難小屋の様子は分からないが、夜や明け方に複数のライトの光が見えていたので数人の利用者がいたらしい。常識的には混雑するほどにはならなかったはず。鋸岳を目指す場合は甲斐駒から縦走するより戸台川や釜無川から往復するのが一般的だ。

 翌朝、いつもどおりに4時過ぎに出発。まだ周囲は暗いがライトが必要が不要かギリギリくらいの明るさだ。樹林帯が開けたところは不要だがまだ森の中は暗い。今朝の天気は快晴で、中ノ川乗越で幕営したはずの3人組にとっては絶好の鋸岳アタック日よりだろう。以前の経験でこの先の道は草木がはみ出して朝露で濡れている可能性が高いのでロングスパッツを装着した。

 三ッ頭まで稜線北側を巻くことが多い。おそらく稜線の南側がガレが進行して危険個所があるのだろう。戸台川側は崖になっている区間がほとんどだ。おかげで尾根上に出ると南側の展望は良好だ。三ッ頭山頂も展望良好で鋸岳が良く見える。振り返ると甲斐駒が高く、北に伸びる坊主山の尾根が懐かしい。尖った北岳、たおやかな仙丈ヶ岳が近い。南アの主要峰も快晴に恵まれている。

 三ッ頭から北に下ると八丁尾根分岐で、その昔はこの尾根上は大岩山までしか道は無かったが、今は烏帽子岳を越えて県境稜線へと道が繋がっている。いつか歩いてみたいところだが今回は烏帽子岳まで。昔はハイマツに突っ込んだのだが今は完璧とは言えないまでも切り開きあり。

 最後は樹林が開けて花崗岩の山頂に到着。山頂標識も立っている。甲府方面は雲海に覆われているが、その向こうに奥日光の山々がはっきりと見えていた。北アルプス方面は雲海の高さが高く、槍穂の標高が高い部分しか見えていない。

 縦走路に戻ると避難小屋方面から人の声が。小屋泊まりの人だろう。鋸岳まで向かうのか、それとも私と同じく中ノ川乗越から熊ノ穴沢を下るのだろうか。

 次の小ピークへの登りで明瞭な巻道と草とハイマツの細い踏跡で尾根に登る道に分かれるが、ここは尾根に向かう細い道が正解なのは前回体験済み。直進する明瞭な巻道はこの先の草付きでフェードアウトしてしまうのだ。間違いやすいのはここくらいで、その先は一本道が続く。ただし矮小なシラビソ樹林の急斜面の登りでは道が薄くなって分かりにくい区間もある。

 嫦娥岳に連なる尾根の分岐点に到着。僅かに縦走路から外れた場所だがここは低い草付きで幕営可能な場所である。嫦娥岳へは尾根が曲がって急激に落ち込んでいるのでここから山頂を見ることはできないが、下りは正しいルートをトレースするのは難しい場所だ。やるなら登りの方がいい。熊穴沢ノ頭最高点には、以前私が付けた赤テープが色褪せながらも残っていた。

 中ノ川乗越へと急激に下っていくが、ここも尾根直上ではなくほとんどが北側を巻いているが道は明瞭で迷うことはない。

 下り切った鞍部が中ノ川乗越で3人組のテントは既に無かった。今頃はどこまで進んでいるだろうか。鞍部は基本的にはガレの積み重なりであるが、鞍部北側が草付きでテント設営可能(ただし少々デコボコあり)、ガレの場所にも2箇所ほど石を均して平らにして幕営可能なサイトがあった。ここから見上げる第二高点への登りはえらく急だが実際に登ってみるとそうは感じないのであった。

 ここからは戸台川への下りだ。しばらくは巨大落石の積み重なった谷間を下っていくが、ここは石の上で踏跡ができないのでルートは見えない。しかし過去何度も歩いた経験で最後は谷の真中に踏跡が出現することは知っているので、広い谷の真中付近のできるだけ歩きやすい場所を拾って下っていく。落石は全て角が鋭く、下手にコケると怪我をしてしまうので慎重に足を動かす。いつぞの足尾の二の舞だけはごめんだ。念のために手袋をして行動。

 今まででかい石だったのが砂利程度の粒に変わると踏跡出現は近い。谷の中央付近を下り両側に立ち木が続くようになると記憶どおりに踏跡出現。これで安心だ。あとは踏跡に従って樹林帯を下っていく。薄い場所もあるが目印は多い。嫦娥岳方向の斜面は樹林でよく見えないが、崖の連続らしく取り付けそうな場所は無いような感じだった。下から登らず横移動できれば楽なのだが。

 樹林の先に明るさが見えればすぐに戸台川だ。河原には釣り人2人。水量はさほど多くはなく、場所を選べば飛び石で対岸に渡れる。河原は広いのでこのまま右岸を歩いても下れると思うが、左岸側には昔あった林道の名残などがあったりして毎度こちらを歩いている。ここで濡れタオルで体の汗を拭いてさっぱりする。

 まだ早朝の時間帯で開けた河原でも涼しい。ただし下るに従って高度は落ち、日が高くなり暑くなるだろう。左岸は目印があったり踏跡があったりケルンがあったりと、たぶん右岸より歩く人は多いと思う。平坦地に樹林が進出した場所では河原からそちらに道が移る。角兵衛沢出合ではテントが2張。おそらく主は鋸岳だろう。今日は天気が良くて樹林がない場所は焦げそうな暑さになるだろうか。

 最初の赤い堰堤を左岸で越えて次の大きな堰堤の手前で休憩。ついでにテントの虫干しをする。人間は日陰に入りテントは日向だ。この堰堤は右岸側に道があって越えられる。この先はこれまでと違って基本的に右岸側の林道跡を歩くことになる。

 この先は以前は車で入れたが、ずいぶん前の増水で林道が崩壊して入れなくなってしまった。発電用取水堰までは明瞭な林道が残るが取水堰下流側は見事に林道が消えていたのが、今回は林道が復活していた。最近ではないだろうが再整備されたらしい。このまま戸台口まで林道歩きかと思いきや、最初のカーブで林道は既に崩壊していた。どうやら整備は数年前の話らしい。でも水量はさほど多くないので問題無し。渡渉は2箇所あったが飛び石でクリアできた。ただし水量がちょっとでも多くなると靴を履いたままでは渡れなくなるかも。

 最後の堰堤を右岸から越えれば林道が復活する。驚いたことに林道の途中に車が止まっていたが、車止めのチェーンがかかる戸台口の昔の林道入口は今は砂利に半分埋もれて、そのお隣に車止めのない新しい林道入口ができていたのだった。ただし、林道の出だしは石ゴロゴロのタダの河原であり、車高の高い車でないと進入は無理だろう。止まっていたのはデリカだったような。

 戸台口駐車場には10台程度の車が止まっていた。私が車を置いた場所はもっと下流なのでここは通過。以前は下流方向への車道は車止めがあったが今は無くなっている。ただし通行止めの看板は出ていた。反対側の入口のゲートは閉まっているのかもしれない。

 暑い日差しが照りつける舗装道路のできるだけ木陰を選んで歩く。相変わらずこの車道の状態は良好で車の通行も可能と思える。鉄製の橋も腐食の感じはなし。その先のゲートはしっかりと閉まっていた。ここまで来れば私の車は近い。戸台川の河原には大型テントと家族連れ。無料のキャンプサイトとしてはいい場所だろう。

 私が車を置いた場所にはもう1台車があったが昨日の車とは違っていた。まだ日影で車内は灼熱地獄になっていなくて助かった。河原で汗を洗い流してから長野市内目指して一般道で帰った。

 

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